〜日本文化のルネッサンスをめざす〜日本酒で乾杯推進会議
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100人委員会コラム
滝沢行雄氏滝澤行雄(たきざわ ゆきお)氏
医師。1932年、長野県生まれ。秋田大学名誉教授、国立水俣病総合研究センター顧問、UNEP環境影響評価パネル委員。専門分野:公衆衛生・環境保健。主著:『1日2合日本酒いきいき健康法』〈柏書房〉、『Osakeテラピーで健康になる本』(BABジャパン)、『メタボとがんに効く魚のチカラ』(同時代社)、『酒粕の凄い特効』(宙出版)など。

讃酒 ―百薬の長―
 

 酒は“百薬の長”といわれ、その有益性が評価されてきた。哀歓の泉としての役割は昔も今も変わっていない。儀式・行事に不可欠の要素であり、社交場の人間関係の潤滑油としても欠かせないものになっている。貝原益軒の養生訓には「少し飲めば陽気を助け、血気を和らげ、食気をめぐらし、愁いを去り、興を発して、甚だ人に益あり」とその極意を吐露している。飲酒は食欲増進、鎮静作用、催眠作用、ストレスの緩和など、その薬理効果を発揮してくれる。

 この薬能に加え、酒が醸しだす生理活性物質が心臓病、がん、骨粗鬆症、老化・認知症などを予防することが最新医学で解き明かしている。この健康的効果は少量ないし中等量飲酒で顕著となり、非飲酒あるいは大量飲酒では逆にリスクが増大するU字型関係にあることが分かった。飲酒時の生理・心理的感覚に影響を与えるアミノ酸が豊富な醸造酒は、胃液の分泌のほか、抗酸化、血液の凝固防止やがん細胞の増殖抑制を示す。世界でも稀にみる、繊細な香味を持つ日本酒 (清酒) が英知と技術の集積によって完成されているだけに、ついつい食指が動く。

 坂口謹一郎博士は「オサケ(醸造酒)とは、誠に人間にとって不思議なたべもの」と指摘している。食べ物であれば度を過ごすこともない。いつでも、どこでも手軽に与えてくれるこの妙趣に泥酔をしてはいけない。酒は元来、麻酔薬であるため、耐用量に個人差がみられ、その効果も千差万別で、このあたりが実に健康に飲む酒の価値が存する所以であろう。天の美禄を酌んで50年余になるが、いくら豊穣の銘酒といっても、健やかな長寿を希うからには、微醺を帯びることしきりである。

 
 
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