自分自身で本当に不思議に思っていることなのです。実は、いわゆる厄年を越えた頃から嗜好が好転し、まさか飲めるとは思いもしなかったお酒が美味しく飲めるようになってきたのです。もちろん、基本的には強くないのですから、すぐに真っ赤になってしまいます。宴席で「乾杯!」と杯を上げて飲みだすと、誰よりも早く真っ赤になりますから、「独り宴会をしているみたい・・・」などとからかわれます。でも、それからいつまでも、けっこうお付き合いができるようになったのです。
若いころは、せいぜいビールか薄い水割りしかいただけなかったのに、今では、ワインも焼酎も、そしてもちろん日本酒も、実に美味しいのです。昔の私を知っている人には、「飲みあがったね!」などと驚かれたりして・・・。
飲めるようになってとにかく嬉しいことは、日本酒の味が実にバラエティ豊かだということを知ったこと。全国各地へ旅をしたり、いろいろといただき物をしたり、とにかくこれほどに香りも味も個性のあるものとは、話には聞いていてもやはり我が身をもって楽しめることが素晴らしい。辛口という言葉にもいろいろとあって、見事スルスル入るお酒に出会ったときなど、ホーッと香りも楽しくなります。落語で聞いていた「ぬる燗」の美味しさは、なるほど。宴席での盃のやり取りも仲間に入れるようになりました。でも、小さなお店の片隅でチビチビ手酌を・・・などということは、やはり基本的にお酒の弱い私には無理なのです。
日本酒を愛する人々からはお叱りを受けることと恐れながらも正直に白状しますが、ある夏の夜に見つけた私の楽しみは、「吟醸酒のロック」です。京都の蒸し暑い夏の夜に、薫り高い吟醸酒をカランと鳴らしながらサラッといただく楽しさは、キュッと冷えたシャンパンにも勝る美しさがあると、この原稿を書きながらもカランといただいています。
これからは、お酒をどれだけ永く楽しめるか、不思議な力に感謝しながら楽しませていただこうと願っています。
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