〜日本文化のルネッサンスをめざす〜日本酒で乾杯推進会議
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兒玉徹氏兒玉徹(こだま とおる)氏
1935年、滋賀県生まれ。東京大学名誉教授。日本醸造学会会長。酒史学会会長。(一社)日本有機資源協会会長。専門は応用微生物学。東京大学、信州大学、東京農業大学等でもっぱら人間の生活に役立つ微生物の機能開発の研究・教育に従事。著書に『地球をまもる小さな生き物たち』(技報堂出版)、『微生物の分離法』(R & D プランニング)、『食品と微生物』(光琳)など。

国際酒文化学術シンポジウムのこと
 

2013年9月22日〜25日に中国湖南省長沙市で開催された標記シンポジウムに参加する機会に恵まれた。「国際」といっても主にコウジカビを用いて醸される酒の文化・学術を対象としているので、実質的にはほとんどが日本と中国からの参加者である。 このシンポジウムは日中の微生物学の泰斗である坂口謹一郎、方心芳両先生の「東アジア特有のカビ文化の研究の活発化」の合意に基づき1991年に四川省成都で発足、以後ほぼ3年毎に開催されて今回が第8回目である。本来は昨年成都市で開催の予定が四川大地震や尖閣諸島問題等があったため1年延期され、開催地も変更されたものである。

今回の主なテーマは「酒文化の伝統とイノベーション」、「伝統の酒、科学技術の酒」、「酒類市場と消費」という広範囲なものであったが、酒の科学技術に関する発表が多く、また、日本側の考える“酒”が日本酒に限らず焼酎、泡盛、ビールその他多岐にわたっているのに対し、中国側は大半がいわゆる白酒(バイチュウ、固体発酵で造られるアルコール度50%以上の蒸留酒)についての発表で、白酒が中国の国酒であることを認識させられた。因みに後で聞いたところでは、中国での酒類の年生産高は白酒(60%換算)1,200万KL、黄酒200万KL、ワイン200万KL、ビール5,000万KLとのことであり、飲まれるアルコールの量としては圧倒的に白酒由来のものが多いことになる。

最終日の湖南省随一(年産3万KL)という白酒工場の見学は、1日で往復約500kmの強行バスツアーで驚いたが、その固体発酵法は我が国では見られないもので、その規模の大きさには圧倒された。縦横2 m x 2.5 m,深さ2 m 程度の長方体の穴に8 t位の高粱を主とする原料を詰め表面を泥で封じて70日程度で発酵終了という。月間の処理量が12,000tと書いてあったので、穴式発酵槽の数の膨大さがご理解頂けると思う。ただ、労働力の大部分を人力に頼っていて若い人に敬遠されるのが悩みとの本音を聞かされた。

政治的関係がややぎくしゃくしている中でのシンポジウムであったが、総じて友好的雰囲気に包まれて和やかに毎日“乾杯”を楽しむことができた。ご存じの方が多いと思うが、中国式乾杯は必ず誰かと目を合わせるのが礼儀で、また、どの宴会でも乾杯は白酒であるため容器は約15 ml の小振りのガラス製高杯に統一されていた。日本酒の場合はもう少し大きくて良いと思うが早く統一した乾杯用の杯を決めたいとの思いを新たにした。

 
 
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