乾杯の時、私はほとんどいつも日本酒を所望するのですが、その理由は、もちろん日本酒がおいしいからなのですが、それ以外にももうひとつわけがあります。
私は都市計画、それも歴史のある都市の魅力を引き出すような都市計画を専門としているのですが、そうした歴史のあるまちには必ずと言っていいほど造り酒屋があります。そしてそうした造り酒屋は通常、まちの中心部に立派な店を構え、奥には酒蔵や煙突が見えているものです。地酒を飲むと言うことはそうした造り酒屋の応援をすること、つまり歴史的な町並みを応援することでもあるのです。
ビール業界の方には申し訳ないのですが、「とりあえずビール」を飲むことは近代的なビールの醸造タンクの存続や拡大を応援することにつながるわけですが、それによってまちの風景が良くなるとも思えません。
まあこれは、お酒大好き人間の屁理屈かもしれませんが、日本酒、とりわけ地酒を飲むことは地域経済と地域景観を支援することにつながるのです。
もうひとつ付け加えると、地酒は地域の風土の中で醸造されているのですから、酒の肴などの地元の食材ともいちばん相性が良いはずです。できればフランスのワインやチーズのように地域の特産を守る原産地統制呼称制度(AOC)とそれをもとに産地の風土や景観を認証する味の景勝地制度(SRG)のように、地酒とそれが生み出される風景とを一緒に愛でる仕組みが日本にもできればいいのにと思っています。
味覚と視覚が結びついて、日本酒を通して日本らしさがさらに磨かれることを今後とも応援したいと思います。
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