私が最初に日本酒を口にしたのは、小学校三年生の頃だった。お酒を飲んだあと、2km位歩いて村の中心附近で行なわれる“ぼん踊り”に出かけた。半分よっぱらいながら踊りをおどったあと、再たび帰りの2kmを歩いているうち、田んぼのふちにあるあぜ道に寝てしまったのである。通る人もほとんど居ない所なので起されることもなく数時間ぐっすりねむった。おきてみると真黒な道である。飲んだのが夕方だったのですっかり夜になっていた。しかし良くねむったおかげですっきりした気持で、真黒な道をトボトボ歩きながら我が家へ向ったのである。お酒を飲んだことを母が知れば、ひどくしかられるはずだが、良くねむったあとなので、ばれることもないだろうと安心して帰途についたのである。数年後、二十になるまで酒を飲んではいけないという法律ができたのである。
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