〜日本文化のルネッサンスをめざす〜日本酒で乾杯推進会議
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千宗守氏千 宗守(せん そうしゅ)氏
昭和20年、京都市に生まれる。武者小路千家第14代家元、財団法人官休庵理事長。慶應義塾大学卒業、同大学院修了。欧米の大学等で公演、実技披露を行なう。
平成6年、ローマ法皇ヨハネ・パウロU世に謁見し茶の湯を紹介、教皇名代の枢機卿らに呈茶を行なう。第15回京都府文化功労賞を受賞。帝塚山学院大学、大手前大学、大阪音楽大学の客員教授をつとめ、平成18年に大手前大学より名誉博士号を受く。

茶の湯と日本酒
 

 こう言うと意外に思われるかもしれませんが、茶の湯にお酒、中でも日本酒は欠かせないものです。特に、茶事では必要不可欠と言えます。
  茶の湯について馴染みの薄い方は茶道、茶の湯というといわゆる大寄せの茶会のイメージが強く、お茶とお菓子のみを頂く茶席の印象ばかりなのではないでしょうか。
  茶事とは茶の湯の催しの1つで、最高の晴れの舞台とされています。初座で懐石、後座で茶、その間に炉中をあらためたり中立があったりと、約4時間に渡り一連のコースのように進行します。

 その茶事の前半、初座では懐石料理に添えてお酒(日本酒)を出します。懐石の最中で、お酒は主客の交わりの潤滑油として大きな役割があります。例えば、主な料理が出た後に、千鳥の盃という場面があります。千鳥の盃では、亭主が山海の珍味と酒を持ち出し、亭主と客がお互いにお酒を注ぎ交わします。亭主は全ての客にお酒を注いでいきますが、その都度客からも一献注いでいただき、拝飲します。この流れによって、主客の心をより通わせていくのです。

 その後、後座で濃茶を服すのですが、懐石やお酒をいただいた上でのお茶はまた格別の味わいとなります。濃茶とは文字通り非常に濃く練り込んだ抹茶です。抹茶は茶葉そのものを体内に取り込みますので、濃茶を胃が空のままでいきなり服しますと、刺激が強くなりすぎます。そこで懐石料理で腹の調子を整え、覚醒作用の強い抹茶と反対に弛緩作用を有するお酒を飲み、心身ともに濃茶に最高の状態で臨むわけです。余計な味や香りが極めて少ない日本酒は、その後のお茶を味わう為にもベストと言ってよく、茶事で最高のお茶を演出するために、大変重要な意味があります。

 この様に、私共の茶の湯の世界でも日本酒は、主客の心を通わすため、またお茶をより美味に味わうため非常に重要な要素を持っているのです。

 
 
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