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茂山千作氏茂山千作(しげやま せんさく)氏

本名:茂山 七五三(しげやま しめ)

◎重要無形文化財各個指定保持者(人間国宝)
◎日本芸術院会員

5歳の時 狂言「いろは」のシテにて初舞台以来、秘曲「枕物狂」に至る流儀のほとんどを勤める。戦後、弟の千之丞と共に、他の演劇活動にも積極的に参加。新作狂言の上演・埋もれた旧作の復活にも力を注ぐ。また中学・高校など学校巡演を永年にわたり行い、若い世代への狂言普及に努める。海外公演にも多数参加。我が国の文化に対する諸国の理解を深め親善に努める。
「天衣無縫」と称されるその舞台は、呼吸をするように自然だが、芸の神髄を感じさせられる。舞台に現れただけで会場の雰囲気が一変する、その存在感は他を寄せ付けない。数々の称賛、栄誉にもかかわらず、いつも笑顔を絶やさず親しみやすい人柄は、狂言はもとより各方面多くのファンがいる。
著書に『千五郎狂言咄』(講談社)がある。

1919年 12月28日十一世茂山千五郎の長男として生まれる
1924年 「いろは」のシテで初舞台
1934年 「三番三」 披く
1940年 「釣 狐」 披く
1949年 「花 子」 披く
1951年 「狸腹鼓」 披く
1963年 大阪文化祭賞奨励賞受賞
1966年 十二世千五郎襲名
1967年 重要無形文化財総合指定 日本能楽会会員となる 芸術祭奨励賞受賞
1978年 「枕物狂」 披く
1981年 日本能楽会常任理事となる 芸術祭大賞受賞
1983年 京都市文化功労者の指定を受ける 芸術選奨文部大臣賞受賞
1984年 ヴァチカン公国においてローマ法王に拝謁
1985年 紫綬褒章綬章
1987年 観世寿夫法政大学能楽賞受賞 京都府文化功労賞受賞 大阪文化祭賞金賞受賞
1989年 重要無形文化財各個指定(人間国宝)に認定される 大阪芸術賞受賞
1991年 日本芸術院会員に認定される 勲四等旭日小綬章綬章
1993年 京都府文化賞特別功労賞受賞
1994年 四世千作襲名
1998年 NHK放送文化賞受賞
2000年 文化功労者 顕彰
2001年 朝日賞 受賞
2007年 京都市名誉市民に選ばれる 文化勲章受章


酒と狂言
 

 お酒はええもんどすなあ。
  一口含めば疲れを忘れ、二口飲めば憂いを拭い、盃を重ねるごとに心浮きたって参ります。中には、一杯飲めば(刀を)一寸抜き、二杯飲めば二寸抜くような恐ろしいお方もありますが、概して酒は場を和ますものです。
  私も、今でこそ年とりまして、体もちょっと悪うしまして、いただいておりませんが、若い頃はよう飲んだもんです。公演後に狂言や能の仲間と酌みかわしながら丁々発止の芸論をやったり、新しい仕事について、お芝居の方々とアアでもないコウでもないと喋っているうちに、酔いがまわって何が何やらわからんようになったり・・・
  しかし、新しい創造的な仕事は、お酒の場が発端になることが多かったように覚えとります。やっぱり、お酒は人間を気宇壮大にさせてくれるからですかなあ。
  狂言師には酒好きな人が結構多く、武勇伝や失敗談がいろいろあるのですが、また、お酒にまつわる狂言もたくさんあります。
  その代表格が『棒縛り』です。飲んべえの太郎冠者と次郎冠者、いつも主人の留守中に酒蔵から盗み飲みするので、今日は太郎冠者は後手に、次郎冠者は棒に両手をくくられてしまいます。そうなると一層飲みたくなるのは人情。また、冠者と呼ばれる召使いたちは反骨心旺盛な人物像なのです。知恵を絞ってマンマと酒蔵を開け、互いに酒を飲ませあううちに酔いがまわってきます。すると不自由な格好がかえって座興となって、主人の帰りも忘れて無邪気に酔い戯れるのです。
  この曲は動きがコミカルで最もポピュラーな狂言の一つです。歌舞伎にも舞踏化されています。
  また『素袍落』という曲があって、これは名作です。伊勢参宮を思い立った主人が、かねて同行を約束していた伯父のもとへ太郎冠者を伝えにやらすと、伯父は急な事で行けないが、太郎冠者の門出を祝して酒を振舞ったうえに、祝儀の素袍まで与えます。お酒大好きな太郎冠者のこと、最初は遠慮しながらも、盃を重ねて酔っ払ううちに主人の悪口まで言い出す始末。こう言うと横着なようですが、太郎冠者は根はお人好しなので、無邪気で愛すべき上戸ぶりでなければなりません。お客さんも一緒に酔いがまわって、春風駘蕩、心うきうきした楽しさに誘い込むように、雰囲気を盛り上げていくのです。
  楽しく無邪気になるお酒、最高どすなあ。

 
 
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