お酒!いいものですね、お酒って!飲む程に心のモヤモヤがファーッと消え失せて心も軽やかになります。
狂言は中世庶民の生活に密着した芸能ですから、お酒とのつながりは深いのです。
まず狂言役者から言うと、亡くなった私の父と叔父もお酒が大好きでした。父はビール、叔父は日本酒でしたが二人とも強かったですね。私も若い頃はずいぶん飲みましたが、年令と共にダメになりました。今は息子等世代の全盛期です。
狂言の登場人物では太郎冠者ですね。彼らは主人に仕えるストレスからか酒に執着する事が多いのです。その執念には脱帽します。
しかし、「過ぎたるは及ばざるがごとし」「百薬の長」も度を超すと災いのもとになります。「ヤアヤア、いつもこの道は一筋じゃが、今日は三筋にも四筋にも見ゆる。アーリャ、世界が回るわ。回るわ、回るわ。こりゃ一足も引かれぬようになった…」と大道一杯になって寝てしまうほどに泥酔すると、必ず失敗するものです。
狂言の中での理想的な酒飲みは「地蔵舞」の出家でしょうか。酒を進められると「私は飲酒戒を保ちまするによって酒を飲むことはなりませぬが、吸う吸うと申しては苦しうござりまするまい」となごやかに盃を重ねる、この洒脱な姿に酒飲みの粋が感じられます。
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