〜日本文化のルネッサンスをめざす〜日本酒で乾杯推進会議
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100人委員会コラム
谷本亙氏谷本 亙(たにもと わたる)氏
財団法人地域振興研究所 常勤理事
地方シンクタンク役員

石川県内に居住して、北陸地方を中心に、温泉、宿泊、農産物加工、酒類、水産物、伝統工芸品などとの関わりを持つ。地元の大学でも日本酒、食文化、発酵食品などに関する講義を行う。著書として「我々は、今人類最高の酒を飲んでいる」『日本酒の愉しみ』文春文庫巻頭論文、「メディアとしての日本酒」編著『北陸酒蔵50選』能登印刷出版部、『酒蔵の維持発展システム、研修プログラム提案』日本酒造組合中央会、『うまいもの図鑑』共著及び監修 北国新聞社

燗酒と思い出
 

 酒造の仕込みが多い秋から冬は雪の到来が待ち遠しい。しぼりたて新酒と燗酒を待ち望む気持ちが強くなる。
  そこには「天恵」というものを感じる。雪に恵まれる「恵雪」というものがある。冬の適当な温度をもたらしてくれる。降ってきた雪はふとんのようなものだ。冬に美味しくなるものだと低温でかつ一定の温度に保つ。
  そして湿度も提供する。ちりが少ない空気清浄作用もある。冬には保存食として造られた物も多いのである。それは雪国の生んだ恵みでもあると雪国に住んでいる意味を再確認する。
  さて、燗酒は和食や普通のお総菜が似合うし、ことさら肴を用意できないのでもいい。特におでんがいい。おでんやではかならず燗酒を頼んでいる。
  家でもこのところ燗酒の晩酌が多い。鍋ものも定期的に出てくるからかも知れない。といって、あまり酒器など道具類のこだわりは強くない。
  燗用ちろりはスズ製品もいいが、2合ぐらい入るアルミ製の「ちろり」を使う。鍋にお湯を沸かして浸し、じっくり待つ。そして、口に運ぶのは飲むのは九州や東北で買った陶器のそば猪口である。旅の思い出が常によみがえる。
  思い出すのはカップ酒紀行の2回目の取材で訪れた秋田県増田町の酒造でカップ酒を詰めるラインで火入れ殺菌を見学、そのまま熱いのを飲んだ時。生酒をカップに詰めて燗をしているのと同じだ。ちょうどいい燗である。
  飛騨の山中での極寒の中での熱燗とホルモン、鳥取での温泉に入りながらのカニと燗酒、豪雪と極寒の山形市内でのおでんやの燗酒、青空だが乾燥して寒い気仙沼市内を廻っていて、たまらず燗酒が欲しいと焦がれて、出てきた熱燗とキンキの煮付けのうまいこと。
  思い出すと、また出かけて飲みたくなる。

 
 
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