〜日本文化のルネッサンスをめざす〜日本酒で乾杯推進会議
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100人委員会コラム
籔内佐斗司氏籔内佐斗司(やぶうち さとし)氏
彫刻家、東京藝術大学大学院教授(文化財保存学)。
1953年大阪生まれ。東京藝術大学大学院の保存技術研究室で仏像の技法研究と修復に携わった経験を活かした独自の彫刻技法を駆使して、仏教的世界観や日本人の精神世界を現代に蘇らせる作品を制作している。2004年から現職に就き、後進を指導している。
http://uwamuki.com/
http://www.tokyogeidai-hozon.com/

下戸のいいわけ
 

 何年前のことだったか忘れたが、日本酒で乾杯100人委員会が発足する際に、沢の鶴の西村隆治氏から入会を誘われた。そのとき、「私は下戸ですが、それでもいいですか?」と申しあげたところ「趣旨に賛同頂ければ酒量は関係ありません」とのお言葉を頂き、安心して入会をさせて頂いた。

 わが国において飲酒は、古来から「ハレ」の行事だ。神々とともに酒を飲むことで喜びや祝意を共有することがもっとも大切だ。したがって日本人の乾杯は「日本酒」でなければならないと私も思う。

 私は大酒が飲める体質ではないが、適量のお酒はとても美味しいし、酒席・宴席は大好きだ。車での移動が多い東京ではほとんど酒を飲まないが、東京を離れたときなどは、夜遅くまで気の置けない友人たちと遊んでいる。いつも遅くまでつき合っている知人のなかには、私をかなりいける口だと勘違いされている場合もあるようだが、心地よい座の空気に浸りながら、自分のペースで飲んでいるだけのこと。

 酒席には、仲間だけで汲み交わす酒と、場を取り持つプロフェッショナルがいる場合の二通りがある。私はどちらかといえば、後者が好きだ。いいバーテンダーや魅力ある店主や女将のいる酒場。また練達の亭主が催す茶事の酒席や、いい芸妓衆や仲居さんが差配する花街のお座敷など、どれも高度な文化空間だ。そこには、機知に富んだ会話や場に相応しい芸事も介在する。私の生涯の友と呼ぶべき友人達は、おおむねこうしたところで出会い、盃を重ねて親睦を深めてきた。飲酒の楽しみは、決して酒量ではないし、酒の強要は、きわめて非文化的な行為だと思う。下戸は、自分の体調や酩酊の具合を調整しながら、慎重に酒量をはかっているのだから、酒豪のセクハラならぬサケハラは、私たちには拷問に匹敵することを知って欲しい。下戸は下戸なりに酒を楽しんでいるのだ。

 何はともあれ、2012年には陽気で元気な歳神さまがお越しになることを願って、「日本酒で乾杯!」

 
 
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