●フォーラムでは興味深々のトーク
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中村富十郎氏 |
続いて、「『乾杯三態』〜日本のかたち、日本のこころ」と題して行われたフォーラムでは、昨年と同様、民俗学者の神崎宣武氏と山形県銀山温泉の藤ジニーさん(旅館藤屋女将)をホスト役に、ゲストの塩川正十郎(東洋大学総長)、中村富十郎(歌舞伎俳優)、浜三枝(女優)の3氏が、それぞれの世界で体験した乾杯の形や、日ごろのお酒との付き合い方などをめぐって興味深々のトークを展開。
中でも、魚屋宗五郎での茶碗酒など、歌舞伎における代表的な飲酒場面を実演して参加者の喝采を浴びた富十郎氏は、「魚屋宗五郎の冷酒の飲み方は三味線と合わせたり、いろいろ決まりがあってとても難しい。ただ、昔アメリカで公演したとき、知日家から『外人に分かりやすいように演技を変えたら軽蔑される。歌舞伎座でやっているとおりに演じてください』と言われてなるほどと思ったことがある。伝統芸能は伝わっているとおり忠実に演じれば必ず外国人にも通じる」と伝統文化の底力を示唆する発言。
また、宮中における新年の酒宴の様子などを紹介した塩川氏は、「お正月は別として、外国の賓客などを招いて行われる宮中晩餐会では、シャンパンとワインが中心で日本酒は欲しい人にだけ供される。私は宮中の行事にもっと日本の仕来りを取り入れてほしい。天皇陛下にも和服をお召しいだければいいと思う」と述べて、参加者の賛同を集めました。
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能門重矩氏(左上)の祝歌に合わせて重蔵神社の杯事を実演 |
このほか、石川県輪島市にある重蔵神社の祭礼で行われているお当(当屋)渡しの杯事を、特別参加した神主の能門重矩さんが歌う祝い唄「まだら」に合わせて、浜三枝さんと藤ジニーさんが実演する場面も。
最後に神崎氏が、「日本には三々九度などの長い杯事の歴史があるが、現在の乾杯の形は明治期以後に現れて一般化したもの。私たちも現代にふさわしい乾杯のスタンダードの形を作り、器も含めて提案していきたい」と述べてフォーラムを締めくくりました。
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