大文字の夜。しんせきが京都に来ることになった。
「何が良い?中華?イタリアン?」
「何言うてんの そら、京料理やろ」
いとこの強いひとことで 和食に決まった。
私は、かず少ない和食のレパートリーの中から 次々 電話したけど・・・
「すんまへんなあ、もういっぱいどす」 そうか、なんかの時は、皆、早くから予約をするのだ。あちこち電話して、一番高いやろなあと思っていた店があいていた。
五人は、四畳半の和室に通された。堀ごたつになっていて ほっとした。
冷酒で 大文字に乾盃!!
おそい。一品、一品、出て来るのがおそい。いつも こんなペースなのか、今夜は 特別こんでいるのか。
それでも、料理が運ばれて来るたびに、美味しい、美味しいと、話がはずむ。
お酒も 遠慮なく、おかわり。
点火は午後八時。
このペースで間にあうのだろうか。
考えてみたら、毎日があわただしく、イタリアンか中華かありあわせ料理か。 こんな上等の店で、上等の器で、上等の料理を頂くのは、もはや 特別の会をのぞいては珍しいことだ。
私が気をもんでいることなど誰も気づいていない。
話題といえば当然ながらしんせきの消息。いとこはとこからその子供達の話まで。酒が話題をはこんでくれる。
おそいおそいと思っていた料理も点火の時間にあわせて見事に終った。 寺町通りはいつもひっそりとしているのに今夜は、ゆかた姿の人が、上(かみ)(北)へむかってあるいてゆく。
午後八時、点火
上等の冷酒の心地よい酔いかげん。
やっぱり 節目は、酒にかぎる。 |