〜日本文化のルネッサンスをめざす〜日本酒で乾杯推進会議
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100人委員会コラム
近藤誠一氏近藤誠一(こんどうせいいち)氏
1946年神奈川県生まれ。ユネスコ大使、在デンマーク大使、文化庁長官を経て2013年退官。現在近藤文化・外交研究所代表、外務省参与、東京都交響楽団理事長の他、公益財団の理事長や企業の社外取締役を務める。『外交官のアラカルト』(かまくら春秋社)、『ミネルヴァのふくろうと明日の日本』(同)、『世界に伝える日本のこころ』(星槎大学出版会)等著書、論文多数。

日本酒を飲む自由
 

 「とんでもない。個人の自由の侵害だ」

 その指揮者(日米のハーフ)はほとんど反射的に言った。コンサートの後、オーケストラの楽員数名や関係者と築地で飲んだときのことだ。 乾杯のあと、日本には「日本酒で乾杯」条例が増えていると話したところ、正面に座っていた日本在住の外人が、

 「日本酒で乾杯しなかったのがバレると、刑務所行きなんだよ」

 と冗談に言ったのに対しての反応だった。もちろん皆それが冗談と分かってはいた。それでもほとんと反射的に「自由の侵害」という言葉が出たことは、「個人の自由」に対するアメリカ人の異常なほどの思い入れの強さを感じさせる。

 人類の歴史は、自由を求める闘いの歴史だった。少なくとも西欧のひとたちはそう思っている。専制君主やカトリック教会などの圧制からいかにして自由を勝ち取るかが長年の悲願だった。そしてアメリカ独立戦争とフランス革命によって大きく前進し、自由と民主主義を主体とする「近代」が生まれた。

 自由への想いがとりわけアメリカ人に強いのは何故か。自由こそが多様な人種の潜在能力をフルに発揮させ、ダイナミックで創造性に富んだ世界一の大国をつくったとの自負があるからだ。この自由を求めて、いまでも沢山の若者がアメリカに渡る。

 しかしモラルの伴わない自由は危険だ。まして全く異なる文化を背景にした「人種のルツボ」アメリカで犯罪率が高い一因はここにある。銃規制が思うように進まないのも、銃で自分の身を守る自由を本気で主張する国民が多いからだという。

 ではなぜそれほど自由に満ちたアメリカ社会に住む若者が、好んで祖国を捨ててイスラム国に行くのだろうか・・・。最近アメリカでは「格差」が大きな問題になっているという。また大統領候補のトランプ氏が排外主義的発言で人気を博している。アメリカの民主主義が空回りして、本来の機能を果たしていないのではないか。

 わが日本の経済はなかなか浮かび上がらないが、日本酒を飲む自由がある日本よ、万歳!

 
 
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