米国癌協会では毎年癌の死亡者数を公表している。同協会の報告書によると癌の死亡率は1990年代に低下に転じ、2003年には癌の死亡者数が1930年以来初めて減少し、その後も減少しつづけている。その理由として考えられるのは、1990年前後に始まった生活習慣の大きな変化であったという。肥満の富裕層が「早死」にしたくなければ食事を改善するしかないと考えたようである。いまはヘルシーな食事と体内に溜った有毒物質を体外に排出する断食がブームとのことである。
多くの日本人は知らない事実であるが、1人当りの1日の野菜摂取量はアメリカ人の方が日本人より多い。農林水産省が平成25年に発表した成績によると2009年度の日本人1人1年当りの野菜摂取量は102kgに対してアメリカ人は123kgであったとのことである。わが国における最近の疫学調査では食事が発癌の最大原因であることが分かってきた。
食品や食品添加物の中に発癌因子があり、調理の過程で発癌物質が発生することがある。また発癌を抑制する栄養が欠如した食事、発癌因子を含む飼料を使った食品を日常的に食べている事実等が指摘されている。国立癌研究センターが発表した2015年の部位別予測罹患者数では大腸癌が発生数の1位と予測されており、食生活の欧米化がその原因と考えられている。わが国の健康長寿を左右するのが食事や栄養である事は誰しも認める事であるが、不思議なことにわが国の医学教育カリキュラムには栄養学がないのである。従って医者は栄養学の教育を受けておらず知識のない医師には指導は出来ない。癌治療や予防に於いて求められるのは分子栄養学である。これは食品やサプリメントを受け入れる人に必要な栄養について考える学問のことである。いつかはサプリメントや機能性食品が抗がん剤にとって代わる時代が来るであろう。
現在抗がん剤治療が有効とされているのは成人の急性骨髄性白血病や悪性リンパ腫など主に血液のがんに限られており固形癌には無効であるからである。
知識を持っているのは農学系らの学者である。彼らは患者に直接接して指導が出来ない。病院の栄養士は医者の処方に従って食品を作っている。患者は直接医師に聞くしかないが、その医師には知識がない。長年放置されている問題で医学教育のカリキュラムの中に栄養学を復活する事は緊急の課題ではないかと思う。
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