〜日本文化のルネッサンスをめざす〜日本酒で乾杯推進会議
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市田ひろみ氏市田ひろみ(いちだ ひろみ)氏
服飾評論家。主著に『世界の民族服を訪ねて』、『衣裳の工芸』、『私という生き方』など多数。

しのび酒
 

 私はお酒に弱い。パーティでもビールは大体三cm位から、ワインも三cmをこえると、もうほほ紅をつけたように赤くなる。
 だから昼のパーティはウーロン茶だ。夜の席は多少赤くなったってかまわないから安心。
 京都は、宴席の乾盃は日本酒に限るという條例が施行されているので、大抵、舞台には乾盃用の樽が置いてある。
 乾盃の一合枡は白木だったり塗だったり酒の銘柄の焼き印が入っていたり。
 宴会の時は枡の隅からお酒がこぼれないように口をつけるが、やっぱり日本酒は猪口で飲みたい。
 自宅にはお気に入りの猪口がいくつもあるが、故・小川文齋先生作の紅彩(こうさい)の猪口が気に入っている。約六cmの高さで持ちやすく、私のしのび酒に丁度似合う。
 年もあけて、新年会がつづいている。
 先週ホテルでパーティがあった。
 正月らしくきもので出席した。乾盃からお食事がはじまる。
 久しぶりに逢う人もいて話題がはずむ。実は今年、五月二十日から京都の龍谷ミュージアム(七条・堀川上ル)で市田ひろみコレクション『世界の衣装たち』が開催されるので、二月からいそがしくなる。
日本にきものという民族衣装があるように、世界のそれぞれの民族に伝統的工芸を伝える衣装がある。それも、だんだん少なくなって、もはや私のコレクションも貴重品となりつつある。
 おしゃべりももりあがって私の頬も、ほてってきっと真赤だろう。
 終宴になって私はタクシーで自宅へ帰った。自宅前で下りようとしたら運転手さんが、
「先生 ええ色ですなあ」
私にはしのび酒は無理だ。

 
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