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100人委員会コラム
山本祥一朗氏 山本祥一朗(やまもと しょういちろう)氏
1935年岡山生れ。1968年の処女作以来、酒をテーマとした著作が比較的に多く、地方へ講演や取材で行くと都心での酒の消費動向やマスコミ業界のことを訊かれることが多いという。昨年に出た『酒つながり』(社会評論社)は快調によく出ている由。

アジのある医師の飲酒の話
 

 斎藤茂太(しげた)さんは、通称「モタさん」でも通っていた。酒造組合もアルコール健康医学協会の会長時代に、お世話になったこともあった。
 そのモタさんが「酒といえば私は週休二日の『休肝日』を日頃から提唱しているくせに、なかなか実行ができない。家内は体重がなかなか減らないのは運動不足と酒のせいにする」(『ひとりで苦笑、老いの実感』講談社)と述べている。
 モタさんの本業は精神科医で、精神病院協会名誉会長や日本旅行協会会長などの肩書きもあり、随筆家としても多くの著作を残している。父が作家(斎藤茂吉)、弟も作家(北杜夫)という血筋だが「父は内向性、神経質、百パーセントの完全主義の粘着性などだが、母は正反対の外向性、活動的、非内性、主導権を握るなどなどだ」(前出に同じ著作)として、自分はその両方のうち母親の性格を多目に受けついでいるのではないか、と自己分析している。
 自分でいう週休二日制の休肝日が守れない医師というのにも親近感がもてるではないか。
 そのモタさんがいう適正飲酒は「日本酒なら二合」で以下、他の酒類の適正飲酒量にも言及しておられる。(『人生は思い立ったら旅仕度』PHP)がこの本のサブタイトルで「いくつになっても感動探し」となっている。つまり暇さえあれば……ではなく暇をつくっては旅に出ていたモタさんでもあった。
 モタさんはまた、シニアプラン開発機構にも関係していて、老年を迎えた人に対して精神医学の見地からの発表もしている。そこでは「物忘れ」は痴呆の前兆とは云いがたいが「物忘れ」という事実を忘れるということは、痴呆が始まっている証拠ともなり得るので注意しなければならない、とも述べている。
 モタさんは晩年に手術をした際に、暫く酒を止められた。そして体調がよくなって飲酒を許可されれば「素直に」飲みはじめた。
 モタさんは「快老」の秘訣の一つは「素直であること」だと思っている、とも語っている。
 若い元気盛りの頃には、自分の体調の望むままに週休二日といいながらも守れず、素直に飲みまくり、老境を迎えてからは医師の言うままに素直に飲酒のコントロールをした。
 以上は20年近く前のモタさんの話だが、今に読んでみてもなかなか味のある随筆ではないか。

 
 
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