すごい暑い夏だった。
その日私は白地麻の藍の茶屋辻もようのきものを着て出かけた。
京都 栗山工房の大箭秀次氏の作品だ。ここ嵐山の松尾大社には、すでに300人程の人が集っている。
寄進された全国のお酒も所せましと並んでいる さすが
松尾大社はお酒の神社だ。
祭神は大山咋神、市杵島姫命。大宝三年(701年)最初の社殿が造営されたという。寛弘元年、一条天皇が行幸されたというし十代の天皇が行幸されている。境内の「亀の井」の水を醸造の時にまぜるとお酒がくさらないともいわれている。
喉元に心地よい冷酒。
夏の日の集いにはなんとふさわしい味ではないか。
冷酒、熱燗、甘口、辛口、なんと多様なたのしみ方があるのだろう。
その日の対談のお相手は元京都大学総長、現在、京都造形大学学長の尾池和夫先生。
先生は日本酒党だ。静かにたしなむ風情が又良いのだ。
神社へついてすでに2時間たつが、誰も私のきものをほめてくれる人がいない。
たしかにきものはむつかしいと思っている人が多い。どこをほめて良いのか、どんな風にほめて良いのかわからない。
特に私はきものの先生だから、きもの着てて当り前。良いの着てても当り前というな立場なのだ。むしろ、私のきものを話題にするなんて勇気のいることかもしれない。と思っていたら、尾池先生がそっとメモを渡してくれた。
「麻衣(あさぎぬ)に 酒をたしなむ 佳人かな 和夫」
(麻衣→夏の季語)
何と見了な人だろう。私の宝物だ。 |