一昨年の百人委員会の折にちょっと話したのだが、酒の資料館なり博物館なりの充実したものを考えてはどうだろう。地方には県によっていいものがあるようだが、中央会のある都心に無いのが心もとない。昔、銀座に日本酒センターがあった当時は足の便のよさもあって、二階の本を中心とした資料室にはかなりの人が集っていた。
今の時点で考えるなら、昭和から平成にかけてのわが国での酒の動きを後世の史家が調べたいと思ったら、それこそ”今”にやっておかねばならないことではないかと思う。例えば佐々木久子さんの『酒』のバックナンバーは広島へ行っているようだが、そこに書かれた多くの酒にまつわるエッセイの類など、この世界を知りたい人にとっては、またとない資料ではないかと思う。
そこでここでは、昭和時代以降に先人の書いた作品のタイトルの一部だけでも列記しながら、どんな話だったかを偲んでみたい。
1983年と88年に作品社という出版社から『酒』と『酔』というテーマの2冊が出たが、そこに書かれたタイトルと筆者の一部を列記してみよう。
○酒の功徳……金子兜太○斗酒四十年……大岡昇平○地球はグラスのふちを廻る……開高健○酒のみの話……サトウハチロー○長夜の酒・酒有別腸……立原正秋○天山祭りの酒……草野心平○わがトラ箱記……河上徹太郎○泥酔懺悔……獅子文六○老ヒッピー記……檀一雄○酒は涙か……色川武大○おからでシャムパン……内田百閨寰ラ道酒……吉田知子○酔漢……小林秀雄○酒と雪と病……橋和巳○野の酒……上林暁○酒場の少女……戸板康二○ヨッパライニ作法ナドアルモノカ……田中小実昌。
まだまだ数多いのだが、こういった先人の酒のエッセイのタイトルを見るだけで、食欲ならぬ読書欲がメラメラと湧いてくるではないか。 |