心理学専門の金子書房の「児童心理「青年心理」に書いていたのは、不幸にも父親を反面教師とせざるを得なかった自分の体験談である。それらをまとめたのが「作家と父」で、続けて「作家と女」「作家と酒」の三部作とした。中で最も売れたのは「作家と酒」で以来、酒がテーマの依頼が多くなった次第である。
「作家と父」でモデルの一人として書いた丹羽文雄氏からご連絡を頂き、それがきっかけで日本文芸協会に入会することになった。昭和53年のことである。
ひとくちに酒といっても、この途の専門家、学者の諸先生は数多い。従って一般愛飲家の視点からみた酒という点にこだわって書いてきたつもりである。
ただ、五十年から百年後の史家が昭和から平成の酒の流れを調べる際には、拙著も参考に採り上げてくれるよう書いてきた。残るわずかの人生もそれに捧げたいと思っている。 |